2010年10月17日日曜日

知識創造型の知財部門















東京の六本木にある「政策研究大学院大学」へ行ってきました。

「知財マネジメント入門」などの著者で、文科省の総括主任研究官である、米山茂美先生の「知財機能・組織の変化」というセミナがあり、訪問。

企業の知財部の今後のあり方や、事業部、開発部、知財部の三位一体の知財について、現在、多くの企業が実現できないのは、なぜか?という問いに対して、具体的な提案をされていました。

共感できるところが非常に多く、日々の業務の中で、これからの知財部って、こういう仕事をすべきではないかなと、漠然と感じていたことを、先生が見事に、抽出されている気がしました。

ご指摘では、知財部は、現在の受動的な部署ではなく、知財部が、積極的に、事業競争で勝ち抜くためのシナリオを作ろう!というご提案でした。

実際、知財部は、残念ながら、事業部、開発部から、あまり相手にされていない、というのが、現状なのかと感じます。そのため、もっとも情報を集めなければならない部署であるにもかかわらず、事業部、開発部から、まったく、情報が集められないという状況が発生し、三位一体の知財ができないと感じていました。
これに対し、情報は発信するこころに、集まってくる原則から、知財が、事業部、開発部に有用な情報を発信することで、自然と情報が集まり、いい循環が生まれることを提案されていました。ここで、集まってきた情報に対して、事業戦略のシナリオを作成して、事業提案、もしくは、事業の休止を提案すべき、というご指摘。

先生のご指摘では、大企業の話が主でしたので、これを、中小企業にあてはめてみますと・・・。当然、中小企業においても、知財部が自らの情報発信から、新たな情報を獲得して、会社へのシナリオ提案という観点は、大いにあてはまるかと考えます。

加えて、中小企業では、事業戦略が社長の権原で多く決定されているという側面に、この知財部の役割が、影響を与えるように思います。

中小企業の事業戦略は、多くが社長の権原で決定されており、誰もそれをとめられないことが、頻繁にあるように思います。この場合に、社長自身も、事業戦略の決定において、社内の誰かに、その決定は、違うのかもしれない、と指摘をしてほしいと思われている場合も多いのかと思います。

つまり、ある事業について、なんらかの事情で社長が、本音ではやめたいと思っていても、従業員や部下との社内の人的な関係などで、その事業をやめる事が指摘できないとします。
この際に、知財部が客観的なデータに基づいて、その事業は辞めたほうが、会社のためになることを、経営陣に指摘することが考えられます。
このように、事業の推進、休止などを提案する仕事は、今までは、経営陣と呼ばれる人がやるべき仕事でした。例えば、取締役や執行役員などが、このようなことを行うと考えられていたと思います。
しかし、現実としては、中小企業では、彼らは、社内の人的関係において、事業の推進、休止を、社長に指摘できないことが多々あり、それが、企業の決定的な判断ミスを招くということも多くあるように感じます。

そこで、知財がある意味、社長を取り締まる役回りとして、コア技術や、競合他社の研究状況等のデータに基づいて、人的なつながりを排除した、事業提案、休止を提案していくことが、社内の健全化に、知財部が役立つことかと考えられます。

そこまでくれば、知財部自体が、会社のコアとなりますね。
こんな知財部にしていけると、知財の未来は、明るいのかな。

(政策研究大学院大学は、六本木の奥地にありますが、大変、新しく、きれいな学校でした。黒人の方もいらして、グローバルな雰囲気でした。)