2014年4月20日日曜日

夫婦のアイデンティティ


アトムは、今日の未明に、本当の天使になりました。

前回のブログを書いたその日の夜でした。短くて早い呼吸を繰り返しており、あきらかに苦しそうであるにもかかわらず、こちらからうてる手段はなく、「この苦しさ、なんとかならない」というアトムが目で問いかけることは感じていたのですが、答えてあげることができませんでした。

最後の瞬間は、咳を何回かして、そのまま呼吸ができなくなった状態でした。死に到る寸前は、苦しまなかったようでした。

眠れない夜を妻と過ごし、かかりつけの動物病院に報告。この後の火葬について指示をいただきました。昼からの火葬に向けて、写真の準備をするも、いままでの想い出が蘇り・・夫婦で、涙、涙。あれもあった、これもあった・・。いかにアトムに我々が支えられていたか・・。

火葬場は、宮崎市から車で40分ぐらいの綾という場所を選びました。綾は、軽井沢のような緑豊かな郷で、個人的には大好きな場所です。アトムのダンボールの棺には、今日、咲いた庭の赤いバラや、鮮やかなツツジを彼のそばに入れてあげました。我々からの手紙も添えて。美しい棺だったと思います。

アトムは、綾の土地に眠らせました。綾は、自然と緑がいっぱいなので、思う存分、走り回れるのかなと思います。

なぜ、こんなに、彼のことを考えてしまうのかな?と夫婦で話しました。死について、これほど夫婦がショックを受けるとは思っていなかったのです。

その答えは、アトムは、僕ら夫婦にとって、アイデンティティだったからだと気が付きました。

僕ら夫婦は、自分がどんな人間かを説明したり、どんな夫婦であるかを説明するのに、いつもそこに、アトムがいたのです。彼は、僕らの自慢でした。僕ら夫婦が、消極的になってしまう自分を変えるためのシンボルのような存在が、アトムでした。

妻が、今回の死を迎えて、我々2人が、あまりにショックを受けていたこと自体に驚き、「私達って、アトムに依存しすぎていたのかな?」と質問しました。

その答えは、

アトムは、「依存」というレベルではなく、僕らのアイデンティティそのものだったのではないかと思います。

もはや、僕らの体の一部であったのでしょう。僕ら夫婦がどんな夫婦かを知ってもらうために、彼の存在は欠かせないものだった・・。




最高のパートナーでした。

ありがとうアトム。

2014年4月19日土曜日

アトムとの生活

2014.4.19のアトム

子供の頃から、いつか、犬を飼いたいと思っていました。

弁理士試験に、5回失敗し、微妙に絶望気味・・。何か新しい自分を見つけないと・・と思っていて、6回目に失敗した時には、犬を飼おうと決めていました。

飼う犬は、ジャックラッセルテリアしかない。絶対ない。と決めていました。ゴールデンレトリバーも魅力的ですが、マンションなので、まあ、中型犬で。ちょっとぐらい、ヤンチャな方がいい・・と。

予想どおり!?6回目の試験に失敗し、犬を飼うことに決めました。インターネットで検索し、京都に、可愛いジャックラッセルテリアがいることを確認。当時、ETC1000円の時代で、妻と2人で小旅行でした。

行きの車の中では、なんて名前にするか、妻と話し合い。ショコラとか、モカ、とか、かわいい名前が連想されるも、アレックス、アトムなど男の子っぽい名前も。結局、モカでいこうと、話していたと思います。

そして、面会。一目見た瞬間に、断る理由も全くない、最高の犬でした。他の子犬にちょっかい出す、やんちゃそうな顔、しぐさ。一目惚れでした。

帰りの車の中で、あまりに、やんちゃな犬なので、モカは、似合わないと妻とはなし、アトムとつけました。

当時、僕は、一人社長で会社を設立したばかりで、自宅で仕事をしていましたから、話し相手になる、犬がいるのは、嬉しかった。そして、犬の散歩の毎日が新鮮でした。ちょっとした運動になるし、近所の方とのコミュニケーションができて、一人で仕事していた自分には非常に助かりました。また、夫婦で散歩に行くことも多く、犬をきっかけにして、近所の方と交流できるというのは、子供がいないわれわれにとって、結構、新鮮なうれしいことでした。



また、僕自身も、アトムを叱ったり、アトムの親代わりを演じることで、犬に声をかけたり、近所の方に積極的に声をかけたりと、社交的になったように思います。子供などが苦手だった自分にとっては、代替的な子供である、アトムが居ることで、人や犬とのふれあいが自然とできるようになったと思います。

僕ら夫婦は、それぞれの職業で、独立して仕事をしているため、犬の散歩や犬の話題が、夫婦共通の行動や話題となり、夫婦関係を非常に支えてくれたように思います。共通の趣味の一つになりました。

埼玉にいた時も、宮崎にいた時も、河川敷でお友達ができて、よく遊びまわりました。また、震災の後に、東北から埼玉に移住されていた方に、アトムがきっかけで、出会うことができました。その方達とは、いまも犬を通じて交流を続けています。


先日、アトムが胃がんであることが分かりました。かなりの末期です。

僕達としては、全く予想もつきませんでした。最近、散歩の量が減っても大丈夫だな・・ぐらいに思っていましたが、熊本の旅行から帰ってきてから、食欲が減ったので、病院に連れていって、判明しました。

大学病院でも診てもらい、既に、肺、脾臓、肝臓など多くの箇所に転移しているとのこと。若いせいか、進行がかなり早いようで、先生も、これほど早いのは初めて見た・・とおっしゃるほど・・・。

今日は、あまりに、アトムの呼吸が苦しそうなので、先生に診てもらうと、水がたまっているわけではなく、肺の進行が早く進んでいて、対処のしようがないということ・・。苦しそうな呼吸に手を打てないのか・・。この苦しそうな状況を目の当たりにしても、何もできることがない・・。

肺がんは、1ヶ月程度で死に至る、ということで、これからアトムは、どう生きて、どう死んでいけばよいのだろうか。

僕達夫婦に、たくさんのことを、与えてくれた小さな天使が、もう少しで、いなくなってしまう・・そんな悲しい想いです。

アトムは、やんちゃなのですが、実は、僕ら夫婦に似て、運動神経が結構、悪いんです。ジャンプが出来ません。なので、よく転んだりするのですが、すぐに立ち上がって、前に進みます。僕は、その姿を見て、そうだ、転んでも、すぐに立ち上がって、前に進めばいいんだ。なんて、当たり前のことを、彼から教わりました。そんな、前向きな自分の形成に、彼が大きく関わってくれたと思っています。

そんな前向きになった自分とはいえ・・・これから亡くなるアトムをみて、すぐに前を向けない・・そりゃそうですよね・・。

今も涙でいっぱいです。