2012年6月4日月曜日

知的創作活動のパートナーとしての音楽



今日は、いつものブログと趣向が違いますが、私のコントラバスの先生の演奏会を紹介させてください。

7月20日に新宿でベルン交響楽団のソロ主席の石川滋氏の演奏会があります。詳細はこちら

この演奏会のパンフレットにコラムを書かせていただくことになりましたので、先行してしまいますが、演奏会に足を運んでいただくことを願って、下記に掲載させて頂きます。是非、聞きに来てくださいね。

コラム

都会の喧騒を離れた避暑地。朝の木漏れ日が溢れ、小鳥が囀る小屋で、あなたはデザインをスケッチし始めるとしましょう。自然のエネルギーを体いっぱいに吸収しながら、インスピレーションを得た知的創作活動を行う。そんな、あなたの創作的な時間に、聴きたくなる音楽って、どんな音楽でしょうか?

私は、芸術家ではないのですが、発明という抽象的なアイデアを取扱う仕事をしています。これは、いわゆる右脳が司る直感的思考と左脳が司る論理的思考をバランスよく活用して、客観的に把握できる文章や図面にすることが求められます。なぜか私は、晴れた日の朝早くに、この知的創作活動の能率が上がります。

実は、今までこのような創作的時間に聴いていたのは、ヒラリー・ハーン演奏のバッハ作曲:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番でした。しかし、昨年、石川滋氏演奏のバッハ作曲:無伴奏チェロ組曲第1番から第3番のCDが、ヒラリー・ハーンを抜きました。

石川氏の誠実さが表れる純粋な音色により右脳の直感的思考が高まり、同時に、精緻なバッハの幾何的なフレージングにより左脳の論理的思考が高まる。つまり、石川氏の誠実さに負けないように、純粋に発明を捉えなくてはと、自分の文章も背筋が真っ直ぐに伸びるような感覚を得てくる。それと同時に、バッハの精緻な論理的な構成力により、文章内の部分と全体の整合性に対する意識が高まる。音楽が、私の知的創作活動をバックアップしてくれる瞬間を感じる。

木漏れ日の中の巨木や森の木々がそのまま声を出して歌っているかのように聴こえるコントラバスの音色。コントラバスは、弦楽器の中での最低音を奏でることにより、巨木のような包容力と優しさを感じさせる。さらに、コントラバスは、弦楽器の中で最大のボディを有することから、ここから生まれる豊富なエネルギーが、森から無限に溢れるエネルギーを感じさせる。そして、何より、巨木が歌っているとは思えないほどの、石川氏が作る繊細な音色、フレージング。この融合により、論理的に精緻でありながら、同時に大きな優しさを感じる。まるで、外の木々が私の知的創作活動を応援してくれているみたいだ。

好きな俳句を考えたり、陶芸や木工の創作活動。そんな、あなたの知的創作活動のパートナーとして、表現力豊かな芸術家を近くに感じることができるのは、人生の豊かさを感じることができる瞬間なのかもしれません。



石川氏の動画は、こちらになりますので、是非、一度、聴いてみてください。