2011年8月6日土曜日

知を活かす

新聞で、「いきる」や「いかす」を、「生きる」、「生かす」を使っていますが、「活きる」や「活かす」を使う場合が多々あるのでは、とよく思っています。例えば、「経験をいかす」は、「生かす」が新聞では使われますが、個人的には、「活かす」を書いて欲しい。どうやら、新聞協会?等のきまりのようで、「生きる」を使っているようです。

毎日を、ただ、生活するのであれば、「生きる」でよいのですが、毎日を活き活き、生きるのであれば、「活きる」であるべき?なんて思っています。

僕は、弁理士という仕事をしているので、発明の話を聞いて、その発明に対して特許を出したり、ビジネス上で、そのアイデアをどうしたらいいのか・・といった話をお客さんとします。
しかし、話を伺う発明の全てが、特許になったり、ビジネスで成功できる!といった発明であるとは限りません。むしろ、いや、それは、、、特許にするのは厳しいな・・という発明が圧倒的に多いのが現実なんです。

「あ、いや、それだけでは、特許をとれないんです」

と僕が一言いってしまうと、すべてが終わってしまうことが多々あります。

発明者は、そのアイデアを、自分の一生のアイデアとして僕に説明してくれていることも多々あります。何回も考えたでしょう。それで、これでいけると思って、思い切って、僕に会いに来てくれて・・・一生懸命に説明をしてくれています。極端な場合は、そのアイデアが自分の自己実現として、熱く説明してくれる場合もあります。

そんなアイデアに対して、「それは、こんな技術が最近、流行っているので、これと同じですよね。」
と、あっさり返してしまっては、失礼な場合もあります。もちろん、特許の相談に来られているので、既に、誰かがやっていて新規ではないものや、進歩性がないものについては、はっきり、指摘しなくてはいけません。ですが、それだけで、突き放すのは、あまりに酷な場合も多々あります。

「今のままでは、厳しいのですが、それって、こういうことをやりたいんですよね?その特徴はこういうところなので、同じ方向で考えると、こういうことに適用できますか?」「あーそうなんです。その場合も、実は・・」といったように、発明を更に発展させるように、素材を「活かして」いくと、そのブレストの中で、新しい発明が生まれたり、特許になりうる技術が生まれます。

発明を「活かす」こと、これが僕らの仕事です。つぶすことは簡単かもしれません。つまり、若干、いまいちなアイデアに対して、単に、発明が生きているままに捉えて、ダメ出しをするのではなく、その発明を「活かす」にはどうしたらよいか考えてみる。アイデアの芽を活かしてあげる・・それが弁理士の仕事なのでしょう。そんな、弁理士の仕事は、なんだか人々の“知”を育んでいるように思います。

生徒の個性を「活かす」ことが大事なんです。

学校の先生が、こういうふうに発言する際には、「活かす」であって、当然、「生かす」ではありません。単に、僕らは、生きていれば良いのではなく、その人の特長を活かすことが大事で、活かすことが、生徒たちが長く生きる人生において大事であると言えます。例えば、自分の個性を活かして、社会で活躍したり、自分に自信が生まれます。それを促すことが教育と言われているのでしょう。先生は人を育みます。

僕ら弁理士は、特許庁に対する、単なる書類の作成屋さんではありません。アイデアがあればそれで、仕事が終わるわけではありません。我々は、アイデアの育て役です。そこに、「その人のアイデアの特徴を活かす」という手法を用いて、知を育んで、ひとりでも多くの知を輝かせることができれば、と思っています。

(アトムも、ただ生きるのではなく、思いっきり走りまわって、活き活きしたいよね!)

1 件のコメント:

まさし さんのコメント...

失敗イコール汚点と若者は認識しているのかも!
「失敗したのでやめる」など最近目立ちますね。

これも、我々中堅にゆとりがなく失敗と言う名の教材を提供できていない事にも大きく関係しているのかもしれません。

人を目で見るのではなく心で診て活かす器が我々に求めれれているようですね。
活きるとは奥が深いですなぁ~!