2010年11月1日月曜日

特許制度がイノベーションを阻害?




















HOLLY WOODは、なぜ、西の端っこのカリフォルニア州で、映画を盛り上げることができたのか?

知ってました?

ちなみに、トーマス・エジソンの研究所は、アメリカでも北東の端っこ、ニュージャージー州にありました。

ヒントで、わかりましたかね?

20世紀初めの当時、現在では超大手の映画製作会社であるFOX社やパナマウント社は、エジソンの映写機や映画制作にかかる発明の特許が及ばないよう、東から離れ、西の端っこで、特許の制約の及ばないハリウッドにて、映画を盛り上げ、ハリウッドにて、映画にイノベーションが起こった・・というのが答えでした。

ここ近年、特許権者を強力に保護する、いわゆる“プロパテント”に対して、疑問を呈する本が、日本語でも出版され始めました。上記のハリウッドの話題は、写真の「<反>知的独占」(著者:ワシントン大学の経済学者:ミケーレボルドリンさん)に記載された、特許がイノベーションを阻害すると考えられる一例として、示されていました。

確かに、特許がない場所で、初めて、映画にイノベーションが起こったということです。しかし、そもそも、もしも特許がないとしたら、エジソンは、映写機を発明したのでしょうか?映写機がなければ、当然、映画のイノベーションも起こらないし・・。

「にわとり」が先か、「たまご」が先か・・のような・・。

この本では、特許や著作権など知的財産制度は、利用を不当に制限し、イノベーションの阻害であるため、ないほうが良い、という、やや極端ではありますが、挑戦的な提案をしています。

しかし、弁理士さんや知財関係者には、大変、ショックですが、このような予測は、必ずしも、無視できるものではないと考えられます。例えば、欧州特許庁は、2025年の「未来のシナリオ」の中の一つに、「特許制度は世界中でなくなっている」ということも、シナリオとして、予測しています。

また、著者が書いているように、今のソフトウェアのイノベータは、どうやったら、マイクロソフトが雇う弁護士から、特許侵害を訴えられるリスクを逃れて、新しい革新的なビジネスを始めることができるのか?という問題があるのも、現実だと考えます。これは、現在の米国、日本のソフトウェア産業が行き詰まっている要因の一つとも考えられるのではないでしょうか。

非常に難しい問題です。

産業の発達(イノベーション促進)のためには、特許制度はなくなった方がよいのですかね?

いやいや、やっぱり、失敗を繰り返して、ようやく成功した第一人者は、失敗のリスクを負わず、成功した部分だけ模倣する者に対して、ある程度の、優位性があるべきでは・・・。

この本では、確かに、イノベーションが促進できる理想的な世界が描けているように思えます。
この本の世の中のように、誰もが知財権という、「個人」の財産を主張せずに、「社会」の利用を優先させるような社会は、近い未来で到来することが望ましいと思います。

しかし、現実として、今、現在、特許制度がある状態なのです。つまり、数々の特許権という財産権が、この瞬間も生まれています。このような状態で、仮に、特許制度がなくなると、彼らの個人の財産権を無にすることになりますね。したがって、行政や国が、個人の財産に対して、そこまで介入するのは、時間をかけて調整しなければなりません。資本主義で、かつ、民主主義の世の中で、財産権である知財権を放棄することを国民が理解し、その考えを大多数が支持することは、現在では想像がつかないかと思います。
さらに、企業や個人の技術の探求による解決手段を守るには、特許制度以外の制度が思いつきません。確かに、特許の存続期間の短縮や、特許権者が差止請求をできなくするなど、特許権者の権利行使をある程度、制限することは、イノベーションが促進されることを前提に、あってよいと思われます。

しかし、最初のイノベータの経済的利益を、制度的にも無にすることは、資本主義社会が続く限り、考え難いのではないでしょうか。

特許制度とイノベーションの関係は、今後、大いに、議論されるべき事柄だと考えます。これからの時代に、どのような特許制度に変わっていくのかということも非常に興味がありますね。

(写真のPC画面に写っているのは、経済学者ではなく、法学者が特許制度の意義に対して問題を指摘している「Patent Failure」という本です。いやー知財関係者には、恐ろしそうな本ですが、興味深そうです。次の課題図書にしようと思います。)

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